法令基準日:2026年4月1日/公開日:2026年11月7日。掲載する確認問題は当サイトの独自参考問題です。既に演習へ公開している問題を読み直し用に再掲しており、演習の問題数を追加するものではありません。
民法では、原則を覚えていても、条件を一つ読み落とすと答えが変わります。ここでは公開済みの4問を使い、「返還時期の定め」「解除の時期」「必要な注意」「時効消滅前の相殺適状」を区別します。
まず確認する4つの条件
| 論点 | 問題文で探す条件 | 結論の要点 |
|---|---|---|
| 消費貸借 | 返還時期を定めたか | 未定なら貸主は相当期間を定めて催告 |
| 委任解除 | 不利な時期か、やむを得ない事由はあるか | 解除できても賠償義務が生じる場合がある |
| 工作物責任 | 占有者が必要な注意をしたか | 注意を尽くした場合は所有者が責任を負う |
| 時効後の相殺 | 消滅する前に相殺適状だったか | 要件を満たせば時効後も相殺が可能 |
1.返還時期が未定でも、返さなくてよいわけではない
金銭を借りた際に返還日を決めなかった場合、民法591条1項は貸主が相当の期間を定めて返還を催告できるとしています。一律に「貸した1年後」と決まるわけではなく、請求した瞬間に必ず履行遅滞になるという説明でもありません。次の問題は、特約や特別法のない個人間の金銭貸借です。
確認問題:消費貸借/返還時期の定めがない場合
個人Aは個人Bに金銭を貸し渡したが、返還時期を定めていなかった。民法591条によるAの返還請求について正しいものはどれか。特約や特別法の適用はないものとする。
- Aは相当の期間を定めて、Bに返還の催告をすることができる。
- Aが返還を請求した瞬間に、Bは常に履行遅滞になる。
- 返還時期を決めなかった以上、Aは将来にわたって返還を求められない。
- 返還時期は法律により一律に貸付けの1年後となり、Aはそれ以前に催告できない。
正答と全4肢の理由を確認する
正答:1
- 正しい。返還時期を定めなかった場合、貸主は相当の期間を定めて返還を催告できる。
- 誤り。民法591条1項は相当の期間を定める催告を認めており、請求の瞬間に常に遅滞になるという説明ではない。
- 誤り。返還時期が未定でも返還義務はなくならず、相当の期間を設けた催告ができる。
- 誤り。民法591条は貸付けから一律1年という返還期限を定めていない。
根拠:民法591条1項
2.委任を解除できることと、賠償が不要なことは別
民法651条1項では、委任の各当事者はいつでも解除できます。一方、やむを得ない事由なく相手方に不利な時期に解除した場合は、同条2項1号による損害賠償が問題になります。解除の効力と賠償の要否を分けて判断します。
同項には、委任者が受任者の利益も目的とする委任を解除する場合の規定もあります。ただし、専ら報酬を得ることによる利益は除かれます。次の問題は解除を制限する特約を置かない設定です。
確認問題:委任/解除と損害賠償
土地所有者Aは、売買契約の締結に関する法律行為をBに委任した。民法651条による委任の解除について正しいものはどれか。解除を制限する特約はないものとする。
- 委任は、AとBが合意しなければ解除できない。
- 受任者Bからの解除は法律上一切認められない。
- 各当事者はいつでも解除できるが、やむを得ない事由なく相手方に不利な時期に解除した者は、その損害を賠償しなければならない。
- いつでも解除できるため、どのような時期に解除しても解除に伴う損害賠償義務は生じない。
正答と全4肢の理由を確認する
正答:3
- 誤り。民法651条1項により各当事者からの解除が認められ、相手方との合意が常に必要なわけではない。
- 誤り。解除できるのは委任者だけでなく、受任者も含む各当事者である。
- 正しい。解除の自由と損害賠償の問題は別である。同条2項1号は不利な時期の解除について、やむを得ない事由がある場合を除き賠償義務を定める。
- 誤り。解除自体が認められても、不利な時期の解除等について同条2項の損害賠償義務が生じる場合がある。
根拠:民法651条
3.占有者が注意したら、被害者への責任がすべて消えるのか
建物など土地の工作物の設置・保存の瑕疵が他人に損害を与えた場合、民法717条1項はまず占有者の責任を定めます。占有者が損害を防ぐために必要な注意をしていたときは、所有者が賠償します。所有者には、占有者と同様に注意を尽くしたことによる免責はありません。
「占有者」と「所有者」が同じ人か別の人かを確認し、本問のように別人であれば、誰について注意の有無を判断するかを読み分けます。被害者の過失や特別法の問題は、次の設問では除外しています。
確認問題:工作物責任/占有者が必要な注意をした場合
A所有の建物を占有するBは、損害の発生を防ぐために必要な注意を尽くしていた。それでも建物の保存の瑕疵により外壁が落下し、通行人Cが負傷した。民法717条1項による責任について正しいものはどれか。Cの過失や特別法の適用はないものとする。
- Bが必要な注意をした以上、AもBも必ず免責される。
- Bが必要な注意をしたときはAが賠償責任を負い、Aは自分にも過失がないことだけを理由に免責されない。
- Aが所有者である以上、Bが必要な注意をしたかどうかにかかわらず、同項によりBだけが責任を負う。
- 建物の瑕疵による被害については、Cは民法上の賠償を請求できない。
正答と全4肢の理由を確認する
正答:2
- 誤り。占有者が必要な注意をした場合には所有者が賠償すべきことが同項ただし書に定められている。
- 正しい。本件では占有者Bが必要な注意をしたため所有者Aが責任を負う。所有者には占有者と同じ注意による免責は認められていない。
- 誤り。同項はまず占有者の責任を定め、占有者が必要な注意をした場合に所有者の責任を定めている。
- 誤り。同項は工作物の設置・保存の瑕疵による他人の損害について賠償責任を定めている。
根拠:民法717条1項
4.時効で消滅した債権でも相殺できる場合がある
民法508条は、時効によって消滅した債権でも、消滅以前に相殺に適する状態になっていた場合には、その債権で相殺できるとしています。「時効完成」の語だけで不可と決めず、それより前の状態を確認します。
次の問題では、双方の弁済期が到来して相殺適状になった後、Aの債権の時効が完成し、Bが援用したという順序です。相殺は相手方への意思表示によって行うため、援用だけで反対方向の債権まで当然に消えるわけではありません。相殺禁止その他の制限のない設定で判断します。
確認問題:相殺/消滅時効完成前の相殺適状
AのBに対する金銭債権と、BのAに対する金銭債権は、いずれも弁済期が到来して相殺に適する状態になった。その後、Aの債権について消滅時効が完成し、Bが援用した。相殺禁止その他の制限はない。民法508条に照らし、Aからの相殺について正しいものはどれか。
- 時効が完成した債権を自働債権とする相殺は、完成前に相殺適状だったとしても一切できない。
- Bが時効を援用すると、BのAに対する債権も当然に全額消滅する。
- 相殺をするには、時効完成前に裁判を提起していることが必須である。
- Aの債権は時効で消滅する前に相殺に適する状態にあったため、Aはその債権で相殺することができる。
正答と全4肢の理由を確認する
正答:4
- 誤り。民法508条は、時効消滅前に相殺適状となっていた債権について相殺を認める。
- 誤り。時効の援用だけで反対方向の債権まで当然に消滅するわけではない。相殺は相手方への意思表示による。
- 誤り。民法508条は時効完成前の相殺適状を要件としており、訴えの提起を必須とはしていない。
- 正しい。時効消滅前に相殺適状になっていた場合の相殺を認める民法508条が適用される。
根拠:民法506条・508条
読み落としを減らす復習メモ
- 返還時期未定:貸主が設ける「相当期間」。
- 委任解除:解除できるかと、損害賠償が必要かを分ける。
- 工作物責任:必要な注意による免責は占有者について確認する。
- 時効後の相殺:消滅前の相殺適状と、相殺の意思表示を確認する。
条文を確認する
e-Govの民法で、591条、651条、717条、506条・508条を確認できます。本文は2026年4月1日を基準としているため、改正履歴を読む際は施行日も確認してください。
解説を読んだあとの復習
答えの番号ではなく、「誰が・いつから・何をするか」と「原則の例外」を一言で説明してみてください。その後に分野別演習へ戻り、同じ条件を問題文から拾えるか確認しましょう。この記事の確認欄は開閉式で、自動採点や履歴保存はありません。回答記録と苦手復習は演習画面を利用してください。
